太陽研究者連絡会の皆様 以下の研究集会の案内を依頼され代理で投稿します。 工藤哲洋(国立天文台) -------------------------------------------------------------------------------------------- 2010.03.13 天文関係の皆さま 彼岸近く,強い風の中にも春の色が目立つようになってきました. 重複して受け取られる方,どうかお赦し下さい. 以前にもお知らせしましたが,下記のように,統計数理研究所(昨年10月に 広尾から立川に移転)で共同利用研究集会として「乱流の統計理論とその応 用」と題した研究会を開きます.今回は,データ同化と気象予測,地球・天体 流体を大きなテーマに,その分野の第一線で活躍する方々にその研究内容を基 礎からわかりやすく語っていただく予定です. 年度末の大変お忙しい時期かと存じますが,ご参加・ご討論いただければ幸 いです. 参加費や事前登録はいっさい必要ありません. また,ご周辺にこれらの話題に興味を持ちそうな方がいらっしゃいました ら,本案内をご回送いただければ幸いです. よろしくお願いいたします. 横井 喜充(よこい のぶみつ) 東京大学 生産技術研究所 基礎系部門 153-8505 東京都目黒区駒場4-6-1 Bw-505 phone: 03-5452-6113 fax: 03-5452-6117 e-mail: nobyokoi_at_iis.u-tokyo.ac.jp (Nobumitsu YOKOI) ----------------------------------------------------------------------------------------------- 統計数理研究所 2009年度 共同利用 共同研究集会 『乱流の統計理論とその応用』 研究代表者:横井 喜充(東京大学 生産技術研究所) phone: 03-5452-6113 fax: 03-5452-6117 e-mail: nobyokoi_at_iis.u-tokyo.ac.jp (Nobumitsu YOKOI) 日時:2010年 3月16日(火)-17日(水) 場所:統計数理研究所 3階 セミナー室2 190-8562 東京都立川市緑町10-3 phone: 050-5533-8500 「立川北駅」から多摩モノレール「高松」駅下車 徒歩7分 「立川」駅北口バス乗り場2番から,立川バスで「裁判所前」下車 徒歩3分 「立川」駅下車 徒歩25分 プログラム(都合により内容などが変更されることもあります): 3月16日(火) 午前 10:30-10:35 開会の挨拶 10:35-11:50 (75分) 石川 洋一 (京都大学 地球惑星科学) 「データ同化手法を用いた海洋循環場の推定/予測システム」 午後 13:00-14:10 (70分) 藤井 陽介 (気象庁 気象研究所) 「気象庁における海洋データ同化システムの現状と 特異ベクトルを用いた黒潮大蛇行の解析について」 14:25-15:00 (35分) 吉田 恭 (筑波大学 数理物質科学) 「乱流小スケールにおけるデータ同化の影響」 15:00-15:25 (25分) 服部 裕司 (東北大学 流体科学研究所) 「機械学習と数値気象モデルを組み合わせた風速予測」 15:30-16:00 (30分) ポスター・セッション内容紹介 16:15-17:45 (90分) 田中 博 (筑波大学 計算科学研究センター) 「大気大循環モデルの変遷について」 3月17日(水) 午前 10:30-12:00 (90分) ポスター・セッション 午後 13:30-15:00 (90分) 竹広 真一 (京都大学 数理解析研究所) 「回転球面上の2次元乱流と縞状パターンについて」 15:30-17:00 (90分) 関井 隆 (国立天文台 ひので科学プロジェックト) 「日震学と太陽のダイナミクス」 17:00 閉会の挨拶 --------------------------------------------------------------------------------------------- 共同研究集会「乱流の統計理論とその応用」ポスター・セッション内容紹介 伊藤 純至 東京大学 海洋研究所 junshi_at_ori.u-tokyo.ac.jp 「Dust Devilの鉛直渦度の起源の解析」 晴天時の日中に,大気中に形成される小スケールの強い鉛直渦である,Dust Devil(塵旋風)の鉛直渦度の起源の解析を行った.Dust Devilの強い鉛直渦 度の起源は,これまで定量的に示されたことはなく,まだ結論が出ていない. 本研究ではDust Devilのもつ循環を追跡し,その起源を定量的に調べた.Dust Devilの形成時には,地表面付近の水平面内には常に循環が内在しており,そ の循環が水平に収束されることでDust Devilが生成していることが解析された. 犬伏正信,小林幹,竹広真一,山田道夫 京都大学 数理解析研究所 minubush_at_kurims.kyoto-u.ac.jp 「Kolmogorov流の乱流化と共変Lyapunov解析」 双曲性は力学系理論において重要な概念であるが,Navier-Stokes 方程式など 物理的な系が双曲性を持つか否かはほとんど知られていない.ここでは周期境 界条件(2次元トーラス)下のNavier-Stokes方程式の解(Kolmogorov流) につい て,Reynolds 数を次第に増加させ,乱流化の初期段階における双曲性の程度 (解軌道上の安定多様体と不安定多様体のなす角度)の変化を,2007年に Ginelli らによって開発された共変Lyapunov解析の手法を用いて数値的に調べ た.その結果,カオス解が現れるReynolds数においてこの系は双曲的であ り,Reynolds数の増大と共に双曲性の程度は次第小さくなることが見出され た.さらに,あるReynolds数以上においてはこの系は非双曲的になることが示 唆された. 小布施 祈織,竹広真一,山田道夫 京都大学 数理解析研究所 obuse_at_kurims.kyoto-u.ac.jp 「回転球面上の強制2次元乱流の漸近状態」 回転球面上における非圧縮流体の強制2次元乱流の長時間後の漸近状態につい て報告する. 初期場ゼロから時間積分を行うと,多数本の東西ジェットが形成 された後にジェットの融合・消滅が繰り返され, 最終的には少数本の東西 ジェットが形成されることが見出された. このジェットの融合・消滅過程をさ らに詳しく調べるために, β平面上の南北周期流の上に形成される東西ジェッ トについて, その解析解および線形安定性についても議論する. 木村恵二,竹広真一,山田道夫 京都大学 数理解析研究所 kimura_at_kurims.kyoto-u.ac.jp 「回転球殻内におけるBoussinesq熱対流の有限振幅パターンの安定性と伝播方 向について」 回転球殻内におけるBoussinesq熱対流問題について,Taylor数(回転角速度)と Rayleigh数(熱的不安定性)をパラメータとして,静止解が不安定化する点(臨 界点)からの分岐解である有限振幅の定常進行熱対流パターンをNewton法に よって求め,その東西伝播速度と安定領域を定めた.調べたパラメータ領域で は,熱対流パターンの東西伝播が東向きから西向き(もしくは逆)に連続的に変 化した.この連続的変化は,臨界点近傍では熱対流の子午面構造による渦の伸 縮によって物理的に説明でき,また,有限振幅の領域では非線形効果によって 誘起される平均帯状流に対流パターンが移流されるためと理解できる. 佐々木英一,竹広真一,山田道夫 京都大学 数理解析研究所 esasaki_at_kurims.kyoto-u.ac.jp 「回転球面上の帯状流の分岐」 回転球面上の2次元流は地球・惑星の大気現象のもっとも基本的なモデルであ り,特に帯状流の安定性の問題は惑星大気に特有な縞状パターンに伴うジェッ ト流の存在と関連して研究されている. しかしながら,回転球面上の非粘性帯 状流の線形安定性解析が1970年代に調べられたものの,不安定化の後の非線形 解への分岐は調べられていない.またこの分岐構造は,2次元トーラス上の平 行流のKolmogorov 問題とも関連して,境界をもたない有界閉領域(コンパクト 多様体)上の Navier-Stokes 方程式の解の構造の例としても興味深い.ここで は,回転および非回転の球面上で特に3本のジェットを伴う帯状流からの分岐 構造の計算結果を,2次元トーラス上の場合との比較を交えて報告する. 佐藤友俊,船越智史 電気通信大学 大学院知能機械工学 sato-to_at_miyazaki.mce.uec.ac.jp, funakosi_at_miyazaki.mce.uec.ac.jp 「準地衡風点渦系の平衡状態:外乱と境界条件の影響」 準地衡風点渦系の大規模数値計算を分子動力学専用計算機MDGRAPE3を用いて実 行し,その平衡状態の性質を解明する.特に,外部ストレイン場やシアー場が 平衡状態の統計力学的温度に及ぼす影響や周期境界条件の影響を調べる. 杉本 憲彦 慶応義塾大学 日吉物理学教室 nori_at_phys-h.keio.ac.jp 「地球流体における渦と波の非線形相互作用の研究」 回転・成層の効果を含む地球流体系において,渦(バランスした回転成分)と波 (バランスしない発散成分)の非線形相互作用について調べた.具体的には,球 面浅水系の非線形数値実験により,ジェット(回転成分流)の非定常運動から放 射される重力波(発散成分)を調べた.得られた結果を解釈するために,流体分 野における渦音理論(ライトヒル理論)を援用し,地球の回転効果が重力波放射 にもたらす影響を考察する. 堀田 英之 東京大学 地球惑星科学 hotta.h_at_eps.s.u-tokyo.ac.jp 「乱流拡散で説明する太陽の南北半球磁場の対称性」 古くから知られている通り太陽活動は22年の周期をもっている.これは現在で はダイナモによって維持されていると考えられているが,中でも磁束輸送ダイ ナモというモデルは,太陽活動の特徴的な現象(赤道・極へ向かう磁場の移動 など)をよく再現している.また,太陽の大局的磁場は双極子磁場となってい ることも知られているが,磁束輸送ダイナモで太陽活動を説明する場合,これ は自明ではなく,パラメーターによって,双極子にも四重極子にもなる.本研 究では太陽内部における乱流拡散が太陽の南北磁場の対称性に与える影響を理 解した上で,運動学的ダイナモシミュレーションによって,双極子磁場になる 乱流拡散の大きさ・分布の条件を得た.