太陽研究者連絡会 設立趣意書 (1994年3月)


わが国における太陽研究は、今までにない実り多い時代を迎えています。飛翔体を用いた研究では、何回かの気球、ロケット実験、小型ながら大健闘した「ひのとり」衛星を経て、「ようこう」衛星によって世界のトップに立ちました。電波天文学の分野では、「望遠鏡」の名が正にふさわしい、画像を実時間で出力する干渉計−電波ヘリオグラフ−が完成し、世界のトップに立っています。飛騨天文台のドームレス太陽望遠鏡は、世界の第一級の観測装置であり、高分解能の太陽観測を精力的に推進しています。太陽磁場の観測は、長年にわたる基礎実験をもとに、岡山天体物理観測所の光電マグネトグラフに結実しました。これをさらに発展させた三鷹の太陽フレア望遠鏡は、世界で最も高速かつ自動化されたマグネトグラフとして活躍しています。乗鞍コロナ観測所のコロナグラフも、「ようこう」衛星の支援のために一新されました。世界に二台しかない、大型分光器を備えたコロナグラフを駆使して、新たな発見への挑戦が始まっています。理論研究においても、プラズマ物理学など関連分野と相互に刺激し合いながら、スーパーコンピュータを駆使したMHDシミュレーションを中心に著しい発展を見ています。

「ようこう」に続く衛星として、X線においてはさらに高分解能をめざし、かつ地上からは得られない太陽表面の可視光高分解能観測をもう一本の柱とした衛星計画が立案へ向けて動き始めています。これはX線だけでなく、光学観測の主力をもスペースへと移すものであり、今後の太陽研究の体勢に決定的な変化をもたらすものです。計画の規模・技術的困難の度合いは「ようこう」を大きく上回るものであり、太陽研究者すべての力の結集が必要です。

一方、長期間の系統的な観測に基づく太陽の周期活動の研究は、近年の地球環境への関心の高まりを引き合いに出すまでもなく、重要なテーマであるにもかかわらず、国立天文台の太陽周期活動望遠鏡計画は実現の目処が立っていません。

このような大きな課題に関し、太陽研究者の間での連絡を密にし、十分な議論を行なうための組織を作りたいというのが、今回のアピールの主旨です。国立天文台設立の少し前から、天文学会年会の折りには必ず太陽研究者の集まりを持ってきましたが、太陽研究者の総意を他の諸分野に対して働きかけてゆくには、正式な組織を結成する必要があります。主旨にご賛同いただける場合には、入会申込用紙に必要事項を記入の上、

〒181 三鷹市大沢2−21−1
国立天文台太陽物理学研究系
桜井 隆
FAX 0422−34−3700
e-mail sakuraisolar.mtk.nao.ac.jp
までお送りくださるよう、お願い申し上げます。

発起人(50音順)
内田豊、 魚爰目信三、 小川原嘉明、 黒河宏企、 小島正宜、 小杉健郎、 坂井純一、 桜井隆、 柴崎清登、 柴田一成、 寺沢敏夫、 中島弘、 平山淳、 牧田貢、 丸橋克英、 吉森正人、 渡辺尭、 渡辺鉄哉

(注:2019年10月以降、入会申込は申し込み要綱 (http://jspc.sakura.ne.jp/rensignup.html) を御参考の上、 jspc_officejspc.sakura.ne.jp 宛にメールで御連絡下さい。)